やっとカミュの「ペスト」を読み終えました。
なんせ、読むのは寝る前の一時だったのとにゃんこと遊んでしまうので、なかなか進まなかったのです。
さらには、登場人物が多い上に苦手なカタカナ、特に人名に全てラ行が入ってる! これがややこしくしているような気がします。
でも、個人的な感想ですが、中盤以降に人物の人となりが分かるなどして面白くなってくると思うので、これから読もうとしている方は、頑張ってみてください。
今日は少しだけ、「ペスト」をご紹介します。(ネタバレを含みます。)
登場人物を注目の3人に絞ります。
医師のリウー(主人公)、パリから来ていた新聞記者のランベール、リウーの友人になるタルー(この人がどういう人なのか、終わり4分1か5分の1辺りの長い独白までよく分からないのです。)。
コロナとの類似
舞台はアルジェリアの港町オラン市(フランス領)とされています。
主人公である医師リウーが1匹の鼠の死骸につまずく…
これがペストによるパンデミックが発生する前兆なのでした。
ペストの患者が増え続け、町はロックダウンされます。
そう、この様子がまるでコロナの予言書のようだと言われている所以だと思います。
移動が制限され、人々は流刑囚に例えられています。
また、治療に使う血清がないとか、現場に物資や人が足りないとか、ホテルが隔離場所になるなど、コロナの状況と似ているところがたくさんあるのです。
もしや、スケジュール感も同じだったりして…
4月に始まったペストが終息するのは、翌年1月なのです。
リウーとランベール(世は不条理)
Marukoが一番注目するのは、リウーとランベールの会話です。
ランベールはパリから来ているところロックダウンになってしまいました。パリには愛する女性を残して来ています。だから、なんとしても脱出したい、愛する人に会いたいのです。
そんなランベールがリウーに感情をぶつける場面です。
「ヒロイズムなんて信用しません。」「僕が心惹かれるのは、自分の愛するもののために生き、かつ死ぬことです。」
これに対してリウーは言います。
「ヒロイズムなどという問題ではありません。誠実さの問題なのです。」
この会話の後、ランベールは人伝に、リウーの妻が遠い地で病気療養中(ペストではない)であることを知ります。そして、ランベールは保健隊(ボランティア隊)に参加することを決めるのです。
主人公リウーをヒーローとして、あるいはランベールを単なるロマンチストとして描けば、分かりやすい物語になったかもしれません。
でも、人間の行動は一面的に評価できるものではありません。各々が不条理に翻弄され、その都度それに対応していく…何が善で何が悪か、決定的な答えはない…
そして、必ずしも因果応報や勧善懲悪の結果にならないのも現実です。
カミュは各登場人物の立場から、世の不条理を描いているようです。
リウーとタルー(自己開示と心の幸せ)
リウーと心を通わせるようになったタルーは、ある夜、自分のことを語り始めます。
父は次席検事で、良好な親子関係を築いていました。ところが、タルーが17歳のとき、父の薦めで父の論告を傍聴したのをきっかけに壊れてしまいました。
父が死刑を求刑し、死刑が執行されるときには立ち会う立場であることを知ったからです。タルーは被告人の方を身近に感じ、人に死を要求する父を「毒をもったいやらしい口」とまで表現します。
タルーは直接であれ間接であれ、善意によるものであれ、人を殺すことを拒絶するようになったのでした。
「あらゆる場合に犠牲者であることを決めた」タルーは心の幸せを探し続ける人なのです。
このタルーの自己開示の直後、二人は夜の海で幸福感に満たされ、服を脱ぎ捨て泳ぎます。
全てが浄化されそうな、そんな場面です。映像化するとすれば、ここが一番好きな場面になりそうです。
そして、リウーは、ペストは…
ペストが終息しかかっている頃になって、友人のタルーが…
さらに、遠くで療養していた妻が…
この世は不条理なのです。
そして、ペストは終息しました。
しかし、おそらくいつか、どこかの都市で再び…